アマゾン・ドット・コムのアンディー・ジャシーCEO(2月26日ニューヨークで、写真:ロイター/アフロ)
米アマゾン・ドット・コムは9月中旬、同社のECプラットフォームを利用する数百万の独立系出品者に向け、新たなAIアシスタントツール「セラーアシスタント」を発表した。
単に質問に答えるだけでなく、出品者に代わって事業運営の一部を自律的に実行する「エージェント型AI」を搭載する。
アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)が以前から提唱してきた「AIエージェントによる全社変革」構想を、事業の中核を成す出品者向けサービスで具現化するという。
「応答」から「行動」へ、AIがビジネスパートナーに
新機能の核心は、AIの役割が受動的な「応答」から能動的な「行動」へと転換した点にある。
アマゾンでワールドワイド・セリングパートナー・エクスペリエンスを担当するメアリー・ベス・ウェストモアランド氏は、「出品者の許可を得て、AIが推論し、計画し、行動を支援する」と説明する。
出品者が日々直面する煩雑な業務をAIが肩代わりし、人間がより創造的な業務に集中できる環境の実現を目指すとしている。
この「AI参謀」とも呼べる新セラーアシスタントは、クラウド部門、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が提供するAI開発基盤「Bedrock(ベッドロック)」などを活用しており、その機能は多岐にわたる。
1. 在庫・物流の自動最適化
過去の販売データと需要トレンドを分析し、最適な在庫補充のタイミングや数量を提案。
長期保管手数料が発生しそうな滞留在庫を事前に警告し、値下げや在庫処分といった具体的なアクションプランを提案する。
2. アカウント健全性のプロアクティブ管理
規約違反につながりかねない商品説明の不備や、顧客対応の遅延といった潜在的リスクを24時間体制で監視。
問題が深刻化する前に出品者に警告し、AIが修正案を複数提案。出品者が承諾すれば、即座に修正を実行する。
3. 複雑なコンプライアンス対応の自動化
国や地域によって異なる製品の安全基準や規制をAIが自動でチェック。
例えば、電子製品の出品時に必要な認証が欠けている場合、どの標準規格のどの書類が必要かを具体的にナビゲートする。
4. 広告制作の自動化
新機能「クリエイティブスタジオ」では、簡単な指示を与えるだけで、AIが商品特性やターゲット顧客を分析し、プロ品質の広告用画像や動画、宣伝文句まで一括で生成する。
ある鳥用餌箱メーカーが父の日商戦でこの機能を利用したところ、広告クリック率が4倍強になるという成果を上げたという。
米CNBCによれば、これらの機能はまず、米国の出品者に追加費用なしで提供する。その後、グローバル展開する計画だ。