写真:ロイター/アフロ
米グーグルのクラウド事業「Google Cloud」が、AIブームを追い風に急成長を遂げている。
9月上旬、同事業の責任者が、未計上の契約受注残高(backlog)が1060億ドル(約16兆円)に達し、今後2年間で少なくとも580億ドル(約8.5兆円)の収益増を見込むと発表。
これまで不透明だったAIの具体的な収益化モデルも明らかにした。
検索事業が規制当局からの圧力に直面する中、クラウド事業は持ち株会社Alphabet(アルファベット)の未来を担う新たな成長エンジンとしての重要性を増している。
「AIでどう稼げるのか」への明確な回答
英ロイター通信や米CNBCなどが報じたところによると、9月9日、米サンフランシスコで開催された投資家向けカンファレンスで、Google Cloudのトーマス・クリアンCEO(最高経営責任者)は「我々はAIを使って既に数十億ドルを生み出している」と力強く語った。
同氏が明らかにした事業の現状は、市場の予想を上回る勢いを示すものだった。
受注残高は収益を上回るペースで増加しており、1060億ドルに到達。その約55%が今後2年以内に収益に転換されるという。
これは既存契約のみの数字であり、新規顧客も前四半期比で28%増と急増している。
この力強い成長は、アルファベットが7月に2025年の設備投資見通しを、クラウド需要を理由に750億ドルから850億ドル(約12.5兆円)へと引き上げた判断を裏付けている。
加えて、クリアン氏は、これまで市場が最も知りたがっていた「AIの収益化手法」について、3つの柱を具体的に示した。
1. 消費量(Consumption): 顧客がAIモデルや計算基盤(GPU、TPU)を使用した分だけ、トークン(AIが処理するテキスト単位)に応じて課金する。
2. サブスクリプション(Subscriptions): 法人向けクラウドサービス「Google Workspace」のAI機能やサイバーセキュリティーサービスなどを、ユーザーごとの月額定額制で提供する。
3. アップセル(Upselling): AIサービスの利用を始めた顧客に対し、より高性能なモデルや高価格帯のプランへの移行を促す。クリアン氏によれば、AIを導入した顧客は他のGoogle Cloud製品の利用も拡大する傾向が強く、収益成長をさらに加速させるという。
このAIの収益化手法は、これまで投資家が抱いてきた「AIへの巨額投資は、いつ、どのように利益に結びつくのか」という問いに対する、グーグルからの明確な回答となった。