写真:ロイター/アフロ
米IT大手グーグルが検索市場を違法に独占したとされる反トラスト法(独占禁止法)訴訟について、米首都ワシントンの連邦地方裁判所は今月2日、是正措置を発表した。
米司法省が求めていたウエブ閲覧ソフト「Chrome(クローム)」の売却など事業分割命令は見送られ、グーグルは最悪の事態を回避した形だ。
しかし、その判断の背景には「AIが市場を変える」という裁判所の見通しがある。
AI開発企業への検索データ提供という限定的な是正措置は、果たしてグーグルの牙城を崩すほどの競争を促せるのか。
今回の判断が示す、新たな競争の力学と今後の焦点を読み解く。
事業分割回避の背景にAI、競争の主戦場は新時代へ
今回の地裁判断で最大の焦点は、司法省が求めた事業分割が認められるか否かだった。
アミット・P・メータ連邦地裁判事がこの強硬策を退けた最大の理由は、AI技術の急速な台頭にある。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、メータ判事は司法の過度な市場介入を避け、「市場の力に任せるべき強い理由がある」と指摘した。
背景には、対話型AI「Chat(チャット)GPT」などに代表される生成AIの登場がある。これにより検索市場の競争環境は大きく変化し、AI検索がグーグルの独占を崩す潜在力を持つと判断した。
「事業分割という抜本的な措置に頼らずとも、AIという新たなプレイヤーが市場競争を健全化させる」という考えが、今回の判断の根底にある。
これを受け、グーグル持ち株会社米アルファベットの株価は同日の時間外取引で一時8%以上急騰した。
事業解体という極端なリスクが後退し、競争の軸がAIに移るという新たな局面の始まりを、市場が歓迎した格好だ。