オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)、9月23日撮影、写真:代表撮影/ロイター/アフロ
米オープンAIが対話型AI「Chat(チャット)GPT」上で直接商品を購入できる新機能「Instant Checkout(インスタント・チェックアウト)」を発表してから約3週間が経過した。
この動きは、AIが消費者の購買行動に介在するエージェントの普及に向けた一歩とみられ、Eコマース(電子商取引)やデジタル広告業界に影響を及ぼしている。
AIとの対話から数タップで購入完了
オープンAIが発表したのは、ChatGPTの対話画面から離れることなく、商品検索から決済までを完結させる新機能だ。
例えば、ユーザーが「陶芸好きの友人へのプレゼントを探している」と入力すると、ChatGPTが商品を提案。
その中に気に入ったものがあれば「Buy(購入)」ボタンをタップし、数回の確認操作で決済が完了する。
この仕組みは、米決済基盤大手ストライプ(Stripe)と共同開発した技術規格「Agentic Commerce Protocol(エージェント・コマース・プロトコル)」を基盤としている。
当初は、米オンラインマーケットプレイスのエッツィー(Etsy)に出品する米国内の事業者を対象とし、その後、カナダのEコマース基盤ショッピファイ(Shopify)を利用する100万以上の事業者にも順次拡大する。
巨大な利用者基盤を新たな収益源に
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、ChatGPTの週間利用者数は8月時点で7億人に達し、そのうちの1割以上が何らかの購入意欲を示しているという。
この巨大な利用者基盤を、サブスクリプション(定額課金)収入に加わる新たな収益源とすることがオープンAIの狙いだ。
小売事業者は、成立した取引に対してオープンAIに「少額」の手数料を支払う。一方、ユーザーは無料でこの機能を利用できる。商品価格は変わらないとしている。
新機能の発表は米株式市場で好感された。
英ロイター通信によれば、提携先として名が挙がったエッツィーの株価は直後に7.3%、ショッピファイは4.5%上昇し、新たな販売チャネルとしての期待感を反映した。
販売事業者にとっては、自社決済システムや顧客管理の仕組みを大きく変えることなく、数億人規模の潜在顧客にリーチできるというメリットがある。