オラクルの株価急落、懸念広がる

 この動きを先取りしているのがIT大手オラクルだ。AIへの巨額投資が嫌気されて株価が急落し、新たに発行した一部の投資適格債の利回りがジャンク債(投機的格付け)に近い水準で取引されているという。

 気がかりなのは、バブルが起きているのはAI分野だけではなく、バブル相互の関連が深いことだ。

 ダボス会議で知られる世界経済フォーラムのブレンデ総裁は11月上旬「金融市場で3つのバブル(暗号資産、AI、債務)が発生している」との認識を示した。

 英イングランド銀行(中央銀行)も2日「①AIに投資する企業の過大評価、②ノンバンクによる企業へのリスクの高い融資(プライベートクレジット)、③少数のヘッジファンドによる国債市場の支配が、金融システムを揺るがす3大リスクだ」と警戒を強めている。

 AIと暗号資産の関係は既に述べたが、AIと債務(プライベートクレジット)も密接な関係にある。

 1兆7000億ドル(約260兆円)の市場規模を誇るプライベートクレジットはAI関連企業に積極的に融資してきた。だが、この方針が変わる可能性が高まっている。

 このところデフォルト(債務不履行)案件が相次いでいるからだ。

 バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチは8日「プライベートクレジット市場のデフォルト率は5%に達した」との分析結果を発表した。デフォルト率が今後も上昇するとの見方が有力だ。

 このうえ、金利の上昇でAIバブルが崩壊する事態となれば、プライベートクレジット市場でのデフォルト率は急上昇し、市場全体がパニックに陥ることは間違いないだろう。

 AIバブル崩壊発の金融危機が起きないことを祈るばかりだ。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。