新ビジネスモデルの構築を迫られる経営者

 経営者が目指すべきは、人間の仕事をどこまでAIに置き換えるかではありません。AIを前提にしたとてつもなく大きな仕事を生み出すことです。

 AIによって空いた時間や資源は、新規事業や実験のための貴重な資本になります。

 例えば三井住友フィナンシャルグループでは、生成AI活用により年間数十万時間の削減が見込まれていますが、それを新しいビジネスモデル構築の推進に振り向けてきました。

 AIは仕事を奪う存在ではなく、未来を開く存在なのだと考えるべきです。

 私自身、AIに触れれば触れるほど、仕事とは何か、人間とは何かという哲学的な問いに向き合うようになりました。

 しかし最近は、AIは人間を代替する敵ではなく、車のように未知の場所へ連れていく道具なのだと確信しつつあります。

 歩いていける距離を置き換えるために車が生まれたのではなく、人間が歩いては到達できなかった場所へ到達するために車は使われてきました。

 AIもまた、これまでの延長線上にはない未来を見せてくれる存在です。
その潜在力をどこまで引き出せるかは、経営者の想像力にかかっています。

 AIは急激に能力を伸ばしていますが、AIにしかできないことは、さらに大きな可能性を秘めています。

 これからの企業は、従来の仕事の延長でAIを使うのではなく、AIを前提にした全く新しい仕事をデザインする段階へと移りつつあるでしょう。

 私たちが未知の世界へ踏み出す覚悟を持てるかどうか。それが、次の10年の競争力を決めることになります。

まつもとゆきひろ氏とRubyキャラクターのルビオン