AIはコスト削減ツールだけにあらず
速さも積載量も行動範囲も、歩行とは比較にならないほど拡張しました。車が歩くことの単なる代替ではなく、人類の移動という概念そのものを再定義したわけです。
これと同じように、AIもまた既存の仕事の単なる代替で終わらせてはならないと私は考えています。
車が登場したことで移動時間が劇的に短縮されたように、AIもまた仕事に必要だった時間の概念を根底から書き換えつつあります。
以前なら半日かかっていた調査や資料作成が数分で終わり、プログラムのレビューや修正にも膨大な時間をかけていたものが、今ではAIが瞬時に提案し最適化まで行ってくれるのです。
移動手段としての車が人間の行動範囲を拡張したのと同じように、AIは仕事の時間軸そのものを圧縮し、人間が創造的な領域に割ける時間を飛躍的に増やします。
スピードの変化は単に便利さをもたらすだけでなく、意思決定の密度を高め、新しい産業創出のテンポを根本から加速させる要因になっているのです。
ITの開発者だけでなく、経営者こそこの視点を強く持つ必要があります。多くの企業がAIによって合理化を進めていますが、合理化だけでは企業は成長しません。
大切なのは、AIが生み出す余白を使って、どれだけ人間にしかできない価値を拡張し、AIと共に新しい市場そのものを作り出すかという点です。
私が40年の経営経験を通じて痛感してきたのは、技術の導入はコスト削減以上に、事業の再構築と価値創造のためにあるということです。
では、AIでしかできない仕事とは何かという問いが生まれます。
Rubyイベントの参加者
筆者作成