維新と国民が自民になびくさまを見せつけた
実のところ立憲の執行部も、それは重々承知だったと思う。誰も認めないだろうが「今回の政局では必ずしも政権交代まで行かなくても良い」と考えていたのではないか。何かの弾みで野党がまとまり連立政権ができるなら、それも良い。
仮にまとまれなくても、これまで散々「まとまれない野党」の責任を立憲に押しつけてきた維新と国民民主に対し「自民と立憲、どちらの側に立つのか」を明確にさせられれば、それも良い。そんなふうに考えていたのではないかと。
安住氏は9月11日に幹事長に就任した時「衆院選では圧倒的に他の野党を引き離し、自民党と対抗できている。自民党のライバルはうち(立憲)しかいない」と豪語すると、返す刀で「(自民党は維新や国民民主党を)ライバルと思っていないからでしょ? 補完できて、自分たちの政権のために使えると思っている」と、ある意味こき下ろしていた。
高市内閣発足に向けた政局で、実際に維新と国民民主が自民党になびくさまを国民の前に可視化することで、自らの発言を立証することに成功したとも言える。
とにかく、維新は与党側に転じ、立憲は今後「維新ともまとまれ」という不毛な圧力をかけられることがなくなった。代わりに野党の仲間に加わったのが、少なくとも維新よりは政策的に近い公明党だ。
公明党は連立離脱後「中道改革勢力の軸になる」という言葉を発しており、立憲の野田佳彦代表がうたう「中道に軸足を置く」姿勢と共鳴している。
会談前に握手する立憲民主党の野田代表(右)と公明党の斉藤代表=17日午後、国会(写真:共同通信社)
維新に「抜け駆け」されて野党陣営に取り残された国民民主党との関係はなお微妙だが、最近同党の新たな支持層となっていた「自民党を支持できなくなっていた保守層」は、高市政権の発足と、この政権に協力姿勢を示せなかった玉木氏への失望によって、国民民主党からの支持離れを起こし始めているようにみえる。
もしこの層がはがれ、本来同党が持っていた基本政策が前面に出るようになれば、同党は公明との関係は良好なだけに、野党が「目指す社会の方向性」で一定程度まとまれる可能性は出てくるかもしれない。もう少し見守りたい。
公明党という「ブレーキ」がなくなった高市政権が、過度に「らしさ」を示そうとして国家主義的な価値観を前面に打ち出したり、連立に加わった維新が独自色を出そうとして「身を切る改革」的な新自由主義的価値観を強調したりすれば、国民個人の尊重を重視し、過度な自己責任論からの脱却を目指す立憲や、平和や人権に重きを置く公明とは、明確に差別化される。
このように考えれば、高市政権発足をめぐる今回の政局は、次の衆院選に向けて有権者に「政権の選択肢」を与えるという点では、少なくとも「よりまし」な政治状況を生んだとは言えそうだ。3か月以上もかかった、こんなだらだらした政治空白に何らかの意味を見いだそうとするなら、せいぜいそんなことしかないのではないか。


