ローソンで10年連続増収、株価も3倍以上に伸ばす
2009年、三菱商事はダイエーからローソン株28%を譲り受ける。ローソンはダイエー系列のコンビニエンスストアだったが、ダイエーが経営不振から資金手当をせざるを得なくなり、売りに出されていた。
新浪氏は当初、ダイエーと三菱商事の橋渡し役を務めていたが、その後自ら担当することになり、2002年に43歳で社長に就任する。三菱商事では課長職の年齢だが、その若さで東証一部(当時)企業の社長となった。しかもこの時、新浪氏は三菱商事からの出向ではなく、転籍し自ら退路を断った。このことからも新浪氏のローソンにかける覚悟がうかがえる。
しかし最初は苦労の連続だった。三菱商事を筆頭とする総合商社は、「ラーメンからミサイルまで」と言われるほど多彩な商材を扱っているが、実際の稼ぎ頭は資源などBtoBの大型商材だ。そのためコンシューマービジネスは傍流であり、三菱商事内にもその分野に明るい人材はほとんどいなかった。
そこで新浪氏はソデックスの時同様、自分で調べ考えた結果、たどりついたのがセブン-イレブンの模倣だった。
当時のローソンは国内コンビニ2番手だったが、首位を走るセブンとは、売り上げ・利益だけでなく、1店舗当たりの1日売上高の経営指標でも大差をつけられていた。そうであるなら、トップをまねればある程度は追いつけるのではと考えたのだ。
ところがうまくいかない。今はどちらも全国展開しているが、それでもセブンは関東、ローソンは関西がもともとの地盤。消費者の嗜好も異なる。それなのにセブンの物まねをしてもうまくいくはずもない。何より「なぜセブンにできてローソンにできない」という新浪氏の指令が、社員のやる気をそいだ。
そこで新浪氏は考えを改め、トップダウンではなく現場社員に権限を委譲。現場発の意見を尊重することで社員のやる気を高める方向へと180度切り替えた。さらにコンビニスイーツなど、従来コンビニではあまり力を入れてこなかった分野を大幅に拡充する。その結果、「プレミアムロールケーキ」などの大ヒット商品も誕生した。
こうして新浪氏はローソンを成長軌道に乗せることに成功。2014年に会長を退任するまで10年連続増収を達成し、株価も3倍以上に伸ばした。