習近平と台湾統一の夢
習近平もまた、台湾統一への強い決意を表明し続けている。習近平にとっては、建国100年の2049年までに台湾統一を実現させるのが大きな政策目標である。
鄧小平が政権に復帰してから、50年が経とうとしている。その50年の間に、中国の国力は目覚ましく強化された。今や、アメリカに次ぐ大国となっており、軍事的にも米露に追いつくべく軍備の拡張に余念がない。
1996年の台湾海峡危機の経験から、今や空母も3隻目を就航させている。日本との力関係も逆転している。
鄧小平時代と違って、台湾問題に関して、習近平は日本やアメリカに妥協する必要性を感じていない。貿易についても、取引先を多元化することによって、アメリカへの依存をできるだけ減らしている。第一次トランプ政権のときの経験に基づく政策変更である。
そのような強国となった習近平時代の中国との関わりは、日本の近代技術に渇望していた鄧小平時代の中国との関係とは違う。しかし、そのことを認識していない日本人のなんと多いことか。
嫌中派を名乗り、中国批判を繰り返すだけで生き残っていけると考えるのは、現実を知らない稚拙な人々である。それで販売数を伸ばしている極右雑誌などはビジネスだから仕方ないが、政治や経済の中枢にいる指導者がそうでは困るのである。
高市首相は中国との関係をどう改善しようとしているのか(写真:共同通信社)
習近平は、2027年には任期が終わるので、それまでに何らかの目処を付けたいのである。また、不動産不況が原因で経済成長が鈍化しており、国民の不満が蓄積しているが、その不満の解消のためにも台湾問題に目を転じさせるのは得策である。
さらに、台湾においては、独立派の民進党政権が優位に立っており、国民党に政権交代する機運がない。
そのような状況下で、チェコ、ポーランド、リトアニアなどが台湾との関係を強化しており、これも習近平にとっては気にかかるところである。
12月2日、トランプ大統領は、アメリカと台湾の人的交流の促進を目的とする「台湾保証実施法」に署名し、成立させた。台湾との交流制限を緩和し、台湾との関係強化を図る法律である。中国の脅威、中国の台湾への軍事的威圧に対する米議会の対抗策である。
中国は、当然のことながら、この法律の成立に猛反発している。
「一つの中国」論に対するこのような懐疑的な動きに対して、習近平政権は苛立っているが、中国に対する警戒感もまた世界で広がっている。
そのような状況下で発せられたのが高市首相の発言である。中国の対日圧力はあらゆる分野で強まることが懸念される。




