関税収入の一部を還元する発想はマッチポンプそのもの
関税収入の一部を還元する発想はマッチポンプそのもの。富裕層と貧困層の格差など経済の二極化が進むK字型経済の「下層」から見れば医療保険料、家賃、住宅ローン金利、教育費、税金の構造的コスト上昇は手つかずのまま。失業率4.4%、レイオフ増加の雇用不安も重なる。
株高、人工知能(AI)ブームで「上層」はホクホク顔だが「下層」は不安を募らせる。MAGA(米国を再び偉大にというスローガンを掲げる)支持層の不満を、
トランプ氏はこれまで「関税はインフレを引き起こしていない」「ほぼインフレはない」と強弁してきたが、今回の政策転換に際しては「関税は場合によっては価格を押し上げるかもしれない」と発言、自らのロジックを部分的に撤回した。
政治的には庶民の生活コストを下げるポーズを示す必要に迫られ、経済的に関税が物価高の一因だったことを認めざるを得なくなったという苦しい事情が浮かび上がる。過去1カ月のデータを並べると「2つの米国経済」が同時進行しているのが一目瞭然だ。