環状運転100周年記念のヘッドマークを付けた山手線のラッピング列車(2025年11月撮影、写真:共同通信社)

山手線100年と自動運転が直面する現実

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 今年11月、JR山手線が環状運転を開始してから100年を迎えた。

 山手線は東京都心部を走ることから、日本を代表する路線としても知られ、車両や駅施設などに最新鋭の技術を試行する場になってきた。

 最近の鉄道業界で、技術面・経営面から関心が高まっているのは自動運転・無人運転だ。山手線でも2022年に営業中の旅客列車で自動運転の実証実験を実施し、本格導入するための問題点を洗い出した。

 昨今、鉄道やバスの運転士不足は深刻で、特に地方の鉄道会社は運休や減便を余儀なくされている。山手線を運行するJR東日本は運転士不足という事態に直面していないが、今後を考えると自動運転・無人運転に取り組まざるを得ない。そうしたことから、自動運転や無人運転の実現を急いでいる。

 近年はAIの技術力が飛躍的に向上し、本来は人間が担ってきた労働力を補うシーンも増えてきた。鉄道では技術進化に伴って自動改札や自動券売機の導入が進み、それが無人駅を加速度的に増やすことにつながった。

 さらに、きっぷや定期券といった乗車券類が紙からICカードへと進化し、スマホによるモバイル乗車も定着した。こうした技術の発達は、鉄道の省人化に大きく寄与している。

 駅業務が省人化されていく一方で、長らく列車の運行については無人運転・自動運転が進んでいなかったと思われがちだが、決してそんなことはない。

 1981年、兵庫県神戸市の神戸新交通ポートアイランド線で世界初となる無人運転の鉄道が走っている。また、同年には大阪市を走る大阪市営地下鉄(現・大阪市高速電気軌道)南港ポートタウン線でも自動運転を前提とした新交通システムの運行が始まった。

 このように自動運転・無人運転の導入は関西が先行したが、1995年には東京でも無人運転のゆりかもめ東京臨海新交通臨海線が、2008年には東京都交通局の日暮里・舎人ライナーが開業している。

開業30周年のヘッドマークを付け走行する新交通システムゆりかもめの車両(2025年11月撮影、写真:共同通信社)
日暮里・舎人ライナー(2021年撮影、写真:共同通信社)

 これらはAGT(自動案内軌条式旅客輸送システム)という技術によって自動運転・無人運転を可能にしている。AGTを導入した鉄道すべてが無人運転というわけではないが、鉄道の自動運転・無人運転を大きく前進させたと言える。