“トンネルinトンネルinトンネル” 明治の煉瓦トンネルが連続!

 葉原トンネルを出ると、道路の左側にちらちらと敦賀湾が見えてくる。杉津駅の跡は、現在北陸自動車道の上り線パーキングエリアになっている。旧線当時、杉津付近の眺めは大正天皇も感嘆されたとされ、列車の乗客たちは敦賀駅で人気の高かった名物駅弁「鯛鮨」を賞味したことだろう。

 その“絶景車窓”は今も健在で、パーキングエリアには展望エリアもある(下り線パーキングエリアのほうが標高が高く、「ゆうひのアトリエ」と名付けられた眺望の良い展望台もある)。

旧杉津駅跡は北陸自動車道のパーキングエリアになっている。付近は往年の名車窓で、標高の高い下り線のパーキングエリアからの敦賀湾の眺望が特にすばらしい

 杉津駅跡のパーキングエリア脇を過ぎ、北陸自動車道の下をくぐって突き当りの標示を右折すると、いよいよトンネル群が展開する。

 やや短いトンネルを数本抜けると、年季の入った切石造りのポータルが威厳を放つ曲谷(まがりだに)トンネル(260m)が現れる。ここから芦谷(あしたに)トンネル(223m)、伊良谷(いらだに)トンネル(467m)と、3つのトンネルが連続する。

 過去にテレビ番組「マツコの知らない世界」(テーマ「トンネルの世界」)に筆者がゲスト出演した際、ロケでここを訪れ、「トンネルinトンネルinトンネル!」と興奮して叫んだものだが、芦谷トンネルを挟んだどちらかのトンネルから、そんな珍しいショットも撮れるだろう。

 山中越えの区間最長、1170mの山中トンネルは長い直線のトンネルで、途中で峠のピークを越える。

 出たところが山中スイッチバック(山中信号場)跡で、戦後の高度成長期、国鉄が1000トン輸送を目指したとされる貨物輸送量の増加に対応するため、長編成の列車が退避できるようPC(プレストレスト)コンクリート製の行き止まりのトンネル(約34m)が設けられ、今も山中トンネルの左奥に残っている。

 周りを深い山に囲まれた山中信号場跡は森閑としており、特に、降雪期はトンネルポータルに氷柱が張り、厳しい自然を感じるとともに心が洗われるような気持ちになる。

トンネルが3連続する“トンネルinトンネルinトンネル”の珍しい眺め。フォトスポットとしても人気がある
3連トンネル敦賀寄りの曲谷トンネルは独特の照明で異世界感がある(照明が点灯していない場合もある)
山中トンネル
山中トンネルの内部
山中トンネルは1170mの長い直線トンネルで、総煉瓦造りの空間が続き圧巻。トンネルを出た所にスイッチバック式の長大な信号場が設けられ、戦後長編成化した列車の行き違いに対応した“行き止まりトンネル”も残っている