台湾有事をめぐる高市首相の発言をきっかけに、日中関係の緊張が高まっています。米中対立が長期化するなか、中国はレアアースの供給を握り、半導体や自動車を含む日本企業のサプライチェーンに大きな影響を及ぼしかねません。
地政学リスクがかつてないほど複雑化する現在、日本企業は「中国依存」からどう脱却し、サプライチェーンをどう再構築すべきなのか。経済産業省でFTA交渉などを担当し、現在は経営戦略支援を手がけるオウルズコンサルティンググループの羽生田慶介CEOに話を聞きました。4回に分けてお届けします。
(取材日:2025年11月27日)
※JBpressのYouTube番組「JBpressナナメから聞く」でのインタビュー内容の一部を書き起こしたものです。詳細な前編は、JBpress公式YouTubeでご覧ください。
日中緊張関係、米中や中国内の不安定化も背景に
——台湾有事を巡る高市首相の発言を発端に日本と中国の緊張関係が続いています。改めて今、日本企業が注視すべきことは何でしょうか。
羽生田慶介・オウルズコンサルティンググループCEO(以下、敬称略):中国は国内経済が不安定になったり、共産党政権への不満が高まったりすると、外国を敵視することで国民の関心をそらす傾向があることは、まず念頭に置いておくべきでしょう。
さらに、米中関係の状態によって日本と中国の距離感も変わるという点を理解しておく必要があります。例えば現在の習近平氏とトランプ大統領の関係は個人レベルでは良好で、一定の敬意を持って接しています。こうした時期は、中国に余裕が生まれ、日本に対して強い姿勢を取りやすくなる傾向があります。今回の日中の緊張関係にも米中関係が影響している側面はあります。
そうした上で、短期・中長期で考えられる対中リスクを整理しましょう。短期的には見せしめのような日本人駐在員の拘束といったリスクがあります。中長期的には中国がチョークポイントを握るレアアースの禁輸リスク、さらには中国の過剰生産・大量輸出という構造的な問題があります。