1行のプロンプトが創り出す芸術
プロンプトを書くとき、人はどうしても自分の価値観を込めてしまいます。
丁寧に説明するのが好きな人は、その説明のスタイルをAIに渡すでしょう。歯切れの良い言い回しが好きな人は、やはりその癖をAIに渡します。
AIはその人の思考をスナップ写真のように切り取り、その人ならではの考え方を反映した回答を返してくれるようになるのです。
今では無数のカスタムGPTが作られ、それぞれが異なる性格や判断基準を持つようになりました。
これは、人類の思考がデジタルの上でネットワーク化されていくプロセスそのものだと感じます。
AIは人間の代わりになるための存在ではありません。むしろ人間の思考を保存し、再構成するための装置です。
人類が持つ無数の知能の断片をつなぐ、新しい知的なインターネットなのだと思います。
HTMLが情報に秩序を与えたように、GPTは知能に秩序を与えるのです。構造を持たないAIは、ただランダムに文章を作る装置に過ぎません。
しかし、しっかり設計されたプロンプトを与えると、まるで一つの人格を宿したかのように思考し始めます。
そのプロンプトは、人間の感情、願い、倫理、経験まで含んだ設計図です。人類がHTMLで情報を整えてきたように、これからはGPTで知能を整えていく時代が訪れると私は考えています。
AIは人間を超えるものではなく、人間の考え方を映す鏡です。プロンプトは、その鏡を磨くための布のようなものではないでしょうか。
HTMLが情報を見せる芸術だったように、GPTは思考を見せる芸術になっていくでしょう。
そしてAIを設計する私たちこそが、新しい時代の思想家になっていきます。1行のプロンプトが、小さな文明の設計図になる――。
そんな魅力的な時代の入り口に、いま私たちは立っているのだと思います。
(つづく)