Geminiにもたらされた3つの変革
今までは、米オープンAIの「ChatGPT」に水をあけられていたGeminiも、ここに来てかなりキャッチアップしてきたと思います。
では、具体的に何が変わったのか。技術的な詳細は省き、経営判断に必要なポイントに絞って解説します。
1. 「Deep Think」による推論能力の深化
Geminiアプリのモデル選択に新たに追加された「Thinking(思考)」モード(またはDeep Think機能)。
これは、複雑な問いに対してAIが即答せず、内部で「思考の連鎖」を行い、論理的な妥当性を検証してから回答する機能です。
従来のAIは、契約書の条文解釈や複雑な市場分析において「もっともらしい嘘(ハルシネーション)」をつくリスクがありました。
しかしGemini 3 Proは、論理破綻を自ら検知して修正するプロセスを挟むため、ビジネスにおける「正答率」が劇的に向上しています。
経営会議の議事録要約や、コンプライアンスチェックなど、ミスが許されない領域での実用性がようやく担保されたと言えるでしょう。
私はChatGPTで作った文章を、セカンドオピニオン的存在の「Gemini 3 Pro」に修正させています。
2. 「Google Antigravity」とエージェント機能の真価
今回、開発者・企業向けに最も衝撃を与えたのが「Google Antigravity」というコンセプトと、それを支えるエージェント機能の強化です。
これは、AIがメール、カレンダー、社内データベース、SaaS(Software as a Service=クラウド型のソフトウエアサービス)といった「バラバラのツール」を横断して操作するための基盤です。
従来の「Gemini Agent」も進化しました。
例えば「来週の役員会議に向けて、Aプロジェクトの進捗データをSalesforceから引き出し、グラフ化してスライドにまとめ、参加者に事前送付しておいて」という、複数アプリにまたがる曖昧な指示を、AIが自律的にタスク分解して実行まで行えるようになりました。
これはRPA(ロボットによる業務自動化)の構築コストをゼロにする破壊力を秘めています。
3. 「My Stuff」による組織知の資産化
アプリに追加された「My Stuff(マイ・スタッフ)」機能(またはPersistent Memory)にも注目です。
これは過去に生成したリポート、アップロードした動画、社内用語集などをAIが記憶し続ける機能です。
使えば使うほど、AIが自社の文脈(コンテキスト)や「社内方言」を理解し、阿吽の呼吸でレスポンスを返すようになります。
AIが単なるツールから、自社の歴史を知る「古参社員」のように育っていくイメージです。
技術部門向け(API)のアップデートも経営に直結します。
Gemini 3 ProのAPIでは、新たにthinking_level(思考の深さ)やmedia_resolution(読み取る画像・動画の解像度)といったパラメータ制御が可能になりました。
筆者作成