ところが、自動車燃料についてはトランプ政権の姿勢が異なる。RFSの一部を見直し、米国内でのガソリンやディーゼル燃料(軽油)に混合するバイオ燃料の量を増やそうとしている。
狙いは共和党支持者が多い穀倉地帯の農家支援だ。
トランプ政権の出方が影響を与える可能性も
トウモロコシを原料にするバイオエタノールや大豆油から製造するバイオディーゼル(軽油に混合)は原油、天然ガスと同じ自国産のエネルギーとして税制面でも手厚く支援する方針だ。国内の自動車燃料だけでは伸び悩むエタノール需要を引き上げるため、トランプ政権がエタノール輸出やSAF利用を推進することは十分考えられる。
米国やブラジルのように広大な農地を持ち、持て余すほどの農産物を生産できる国ならそれでいい。一方、主食のコメさえ価格が高騰してしまった日本では、農産物から燃料をつくろうとすると「原料をどうする?」という問題がまず出てくる。
経済産業省・資源エネルギー庁は、2030年に国内で供給するジェット燃料の10%をSAFに置き換えると、国内の航空会社、日本に来た海外航空会社の飛行機に給油する分を合わせ172万キロリットルのSAFが必要になると試算する。重さに換算するとおよそ130万〜140万トンもの規模になる。
2024年1月時点で石油元売りなどが公表した計画で製造能力は192万キロリットルまで増える見通しだが、「原料確保や技術開発等の不確実性あり」という但し書きが付く。
SAFの製造方法は大きく3種類に分けられる。ひとつは廃食用油などを原料につくるもので、次にサトウキビ、トウモロコシなどの農産物や古紙などからエタノールをつくり、それを改質する方法。そして、将来的に考えられているのがCO2と水素から「合成燃料」を製造する方法だ。ただ、日本政府がSAF利用率10%を目標とする2030年まであと5年しかないので、現時点では主に廃食用油やエタノールの利用が想定される。
すると、「日本は廃食用油をリサイクルすればいいじゃないか!」と考える人は多いだろう。ところが、そう簡単にはいかない。