欧州は脱炭素という理想に向かって進むが…

 米国やブラジルには増産余地があるかもしれないが、それでも利用できる農地は限られる。急速なバイオ燃料の推進が食料需給を逼迫させたり、森林破壊につながったりするリスクをどう防ぐかも重要だ。

 欧州議会は2023年に再生可能エネルギー指令(RED)を改定するとともに新たな航空ルールを決定。このルールは域内の空港と燃料供給者に対し、グリーン燃料の利用比率を順次引き上げる(2025年当初は最低2%、2050年には70%)ことを義務付けた。

 新ルールでグリーン燃料と認められるのはCO2と水素から製造する合成燃料のほか、原料を農林業の残さ、廃食用油などの廃棄物、動物性油脂、藻類などに限定。パーム油はもちろん、大豆や食用作物由来、飼料を原料にする燃料は持続可能なグリーンと認めない。

 脱炭素に向けた理想に進む欧州の政策について、国内の航空業界は「欧州型のSAF混合義務化は市場を歪ませ、逆に普及を阻害する」と考える。SAFの利用促進という目的は分かりやすいが、実際に動き始めるとさまざまな問題が浮かび上がってくる。各国の思惑、企業の利害を調整しながら世界全体で脱炭素に取り組まなければならない難しさがSAFにもある。