先輩・田澤は「いつかの僕のことを抜いてくれると思っていた」

 最終7組は鈴木が快走しただけでなく、吉居大和(トヨタ自動車)が日本歴代6位となる27分21秒45をマーク。久しぶりの10000mとなった田澤廉(トヨタ自動車)も27分31秒90の好タイムで走破した。

 他の日本勢は井川龍人(旭化成)が27分52秒61、篠原倖太朗(富士通)が28分06秒04、荻久保寛也(ひらまつ病院)が28分20秒34、吉居駿恭(中大)が28分32秒82だった。

 鈴木の日本記録を自分のことのように喜んだのが大学の先輩であり、現在も一緒にトレーニングをしている田澤だ。

 「自分も日本記録を狙えるような練習をしていましたし、『もっといけるかな』と思った分、悔しさはあります。でも昨年はまるまる走れていなかったですし、正直ずっと不安がありました。『戻れないんじゃないか』と思った時期を考えると良かったかな、と。ただ、芽吹との差を感じた部分がありましたね。自分が行かなきゃいけないときに芽吹は行けていた。いつか僕のことを抜いてくれると思っていたので、(日本記録は)素直にうれしく思います」

 世界陸上の10000mに2度出場している田澤。八王子ロングディスタンスでは後輩の鈴木に“完敗”したかたちになったが、このまま終わるつもりはない。

「今日の結果を踏まえて新しいこと、マラソンをやるのかちょっと考えていきたい。まだ具体的にどこかはわかりませんが、しっかり準備ができたときに一歩を踏み出せればなと思います」

 10000mで26分台を目指す鈴木、マラソン挑戦を掲げた田澤。ふたりのドラマはまだまだ続く。