ロシア主要港の防空の実態

 クリミアの付け根の都市ジャンコイ、西部のセバストポリ、東部のフェオドシアなどには、防空兵器が主に野外に展開し、クリミア南部の山地には長距離監視レーダーが配備してあった。

 これは、クリミアやクラスノダールには重要な海軍施設や石油積み出し用の施設があり、空からの攻撃から守らなければならないからだ。

 これらの施設があるクラスノダール地方のノボロシスク港やトアプセ港を攻撃するには、ミサイル等の飛翔経路に幾重にも防空兵器関連施設が存在し困難を極めた。

 図1は、クリミアからクラスノダールまでの間のロシアの主な「S-300/400」防空兵器(米欧のパトリオットミサイル「PAC3」に類似との情報もある)の配備とその防空範囲を示したものだ。

 ウクライナがノボロシスク港やトアプセ港を攻撃するには、黄色やオレンジ色で示したように、ロシアの防空兵器の配備と防空範囲を通過せざるを得ないことが分かる。

ロシアの防空ミサイル(写真1)とウクラナの攻撃(図1)

左:写真1 「S-400」防空兵器、右:図1 防空カバーとウクライナミサイルの飛翔経路、出典:各種情報に基づき筆者が作成
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 ウクライナは、ノボロシスク港とトアプセ港を破壊するため、またミサイル等の攻撃成功の可能性を高めるため、飛翔経路にあるクリミアの防空兵器を破壊する必要があった。