「2030年代に投資が遅れれば需要が供給を上回る局面も」
再エネと電力網向けの需要だけを見ても、銅やシリコンなどの需要は40年までに2倍前後に増える。これらはもともとの市場規模が大きく絶対量としては巨大だが、リチウムやコバルトのように「何十倍」という伸びにはならない。
カドミウム・テルル・セレンのような薄膜太陽光パネル用レアメタルについては極端なシナリオで数十倍規模の需要増を見込む研究もある。クリーンエネルギー技術向けのリチウム需要は40年までに10〜40倍超に増えると見込まれる。特にEVと蓄電向け需要が爆発的に伸びる。
IEAは「30年代に投資が遅れれば需要が供給を上回る局面があり得る」と逼迫リスクは非常に高いと警告。グラファイトは中国の精製支配と輸出規制で地政学的な供給リスクが高い。コバルトは世界生産の大半がコンゴ民主共和国と中国精製に集中する。
LFP(リン酸鉄リチウムイオン)電池化でコバルト削減が進む一方、供給集中による政治リスクは依然高い。レアアース精製の8〜9割を中国が占め、輸出規制も強まる。太陽光発電向け材料の多結晶シリコンの製造、ウエハー加工は中国に集中し、地政学的リスクが高い。
需給逼迫が懸念されるのはリチウム・グラファイト・ニッケル・コバルト・レアアース・銅。銅は35年に30%不足、リチウムも30年代に逼迫する恐れがある。アルミニウム・シリコン・亜鉛・クロムのリスクは物理的枯渇より高コスト・二酸化炭素規制・電力制約・特定国依存だ。