レアアースの「全バリューチェーン支配」進める中国

 欧州連合(EU)は重要原材料法(CRMA)で34品目の「重要原材料」とそのうち17品目の「戦略原材料」を指定。一国集中の「戦略的依存」を減らし、供給リスクのモニタリングと備蓄・リスク緩和、リサイクルと持続性を高める狙いを持つ。

 30年までに需要の10%をEU域内で採掘。需要の40%をEU域内で加工。需要の25%をリサイクル由来で賄う。どの戦略原材料についても「単一の第三国からの供給が65%超にならない」ようにする数値目標を掲げる。完全自給は無理だが、中国一極から脱出する戦略だ。

 中国は「国家戦略」として重要鉱物を位置づけ、特にレアアースについて「全バリューチェーン支配」を進めてきた。1970年代から自国鉱床開発を開始し、2000年代以降、輸出制限・国内統合・下流産業育成を一体的に進めている。

 23年時点でレアアース鉱石生産の70%、分離能力の89%、精製の90%、磁石製造の92%を掌握した。「レアアースは中国の石油」という鄧小平の分析通り、中国は長期ビジョン、工業政策、国家資本主義を通じて全バリューチェーン支配体制を構築してきた。