米国は対中依存を減らしたが高依存が現状
10月には12種以上のレアアース・関連技術・部品への輸出規制を強化した。他国が中国からの鉱物・加工物・部品に依存している構造を利用して関税・技術制裁・外交交渉で優位に立つことや産業競争力を確保することが習近平国家主席の狙いだ。
レアアース・鉱物は防衛装備・半導体・先端モーター・磁石に使われ、軍事用途を含む。中国が加工・製造を抑えることで他国の先端装備やサプライチェーンを制限できる。重要鉱物を武器化することで米欧が中国に突きつける制裁・関税を緩和させ、有利な条件を引き出せる。
米国は「戦略物資」の文脈から出発し、クリーンエネルギー・同盟戦略を立てる。23年時点で50の重要鉱物のうち12品目で輸入依存度が100%。残りの大半が50%以上輸入に依存していた。対中依存を減らしたいものの、かなり依存しているのが現状だ。
米国は国内サプライチェーンの構築、同盟・友好国との「フレンド・ショアリング」を進める。今年夏、第2次トランプ政権は新たに約10億ドルの重要鉱物支援パッケージを提案した。バッテリー製造・リサイクル支援、レアアース抽出、半導体材料の精製支援が柱だという。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
