ワールドシリーズ優勝のトロフィーを掲げる大谷翔平(写真:AP/アフロ)
(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)
今年度の、ロサンゼルスの「(路面電車を)よけて歩く人々」(ドジャース)と、トロントの「アオカケス」(ブルージェイズ)とで戦われたワールドシリーズは、最終第7戦までもつれ、野球というスポーツのもつ醍醐味をすべて見せてくれた。
日本のメディアは、しかたがないこととはいえ、大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希の日本人トリオのプレイのすごさだけを強調した。
しかしそこだけに焦点をあてて済ますのでは、実にもったいない。
ドジャース側から見て、初戦だけは11―4と大敗だった。
だが、残り6試合のうち、2試合は1点差で、ほかの4試合は5―1、2―6、1―6、3―1だったが、どの試合も7回ぐらいまでは大接戦だった。
その各試合でわたしたちは、メジャーリーグならではのスーパープレイを見、両チームが死力を尽くした総力戦を目撃したのである。
ここまで実力が拮抗したチームの試合となると、勝負はもう時の運、というほかはない。一つひとつのプレイが運不運を決め、その結果、ドジャースがチーム全員で優勝を掴んだのである。
その全7試合を、各試合のヒーロー選手の名を挙げて、振り返ってみよう。
1―1でロサンゼルスへ
最初の2試合は、ブルージェイズの本拠地のトロントで行われた。
初戦。ドジャースの先発は安定のブレイク・スネル。しかし2点先制するも、4回に追いつかれ同点。なおも6回、交代した弱体リリーフ陣が、満塁ホームランを打たれるなど大量9失点。
大谷翔平が7回に2ランホームランを打ったものの焼け石に水で、まさかの11―4という大敗を喫した。
第2戦。満を持した我らが山本由伸の先発。ウィル・スミスとマックス・マンシーのホームランなどで5対1。山本が9回完投で勝利。ポストシーズン2回目の完投勝利で、山本の投球は絶賛された。
第2戦で完投勝利した山本由伸(写真:AP/アフロ)
これでシリーズは1―1となり、ロサンゼルスへ戻った。