証言するトランス女性たちのバランスがまた完璧だ。最初の証人でブルーボーイたちの元締めとして働くメイは「裁判は茶番だ」と斜に構え、周りを撹乱する。
ⓒ2025『ブルーボーイ事件』製作委員会
メイに扮しているのはシンガー・ソングライターでトランスジェンダーを公表している中村中。朝ドラ「虎に翼」でも性的マイノリティーのバーのママ役で出演し、話題をさらった。映画でも滲み出る魔性に惑わされずにいられない。
ⓒ2025『ブルーボーイ事件』製作委員会
2人目の証人は自分のバーを開く夢に奔走するアー子。理想に燃える彼女だったが、手術の正当性を証明したい弁護士から、裁判で自分たちが“性転換症という精神疾患”を抱えた存在で、「手術はその治療の一環である」と主張され、ショックを受ける。
ⓒ2025『ブルーボーイ事件』製作委員会
「女として普通に生きたいだけ」と声を荒らげるアー子役にはドラァグクイーンのイズミ・セクシー。おしゃれが好きで、明るく人気者、コミュニケーション能力の高いアー子には彼女のパーソナリティが欠かせない。
今もなくなっていない差別と偏見
異常とされ、普通の人間として扱われないどころか、嘲笑の対象にしてもいいという社会の空気、先入観。理解のなかった60年代から進歩したとはいえ、世の中ではいまだにトランスジェンダーに対する差別・偏見はなくなっていない。
映画を通して、伝わってくる彼女らの思い。それは「素晴らしい演技だ」などと悠長に感心するものではなく、思わず、ハッとさせられる感覚的なもの。きっと、どんな名優がトランスジェンダーの役を上手く演じても、到達できないもの。
LGBTQが広く描かれるようになったのも最近なら、トランスジェンダー俳優の起用は黎明期。日本映画界に関していえば、もっと稀。この作品が様々なきっかけになることは間違いない。

『ブルーボーイ事件』
2025 年11 月14 日(金)全国公開
公式HP: blueboy-movie.jp
公式X:@blueboy_movie
出演:中川未悠 前原 滉 中村 中 イズミ・セクシー 真田怜臣 六川裕史 泰平
渋川清彦 井上 肇 安藤 聖 岩谷健司 梅沢昌代 / 山中 崇 安井順平 / 錦戸 亮
監督:飯塚花笑
脚本:三浦毎生 加藤結子 飯塚花笑
プロデューサー:遠藤日登思 金 山 吉田憲一 新井真理子 押田興将
製作:アミューズクリエイティブスタジオ KDDI 日活
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
配給・宣伝:日活/KDDI







