虚しい国際金融都市構想の現実

 こうした状況を総括すれば、もともと国際金融センターとして知られる英国・米国・シンガポール・香港に為替取引が集約しているという話でもある。前述したように、今後取引が増えそうな人民元は香港での取引が中心となっているため、シンガポールとともにアジアの為替取引を支える2大拠点として定着していきそうだ。

 その中で、浮上するきっかけを掴みづらいのが東京である。これまで見てきたように、上位5カ国ないし5通貨の取引シェアについて四半世紀の推移を見ると、円や日本の凋落はかなり目立つ(図表④)。

【図表④】

 この背景には電子ブローキングの隆盛により大手金融機関の為替取引拠点がロンドンやシンガポールに集約される動きが進んだこと(多くの取引はロンドン時間での対応が増えたこと)、法人税率で東京はシンガポールに大きく劣後すること、言語(英語)の壁があること、低金利が常態化していた円は調達通貨と見なされ双方向の厚みを伴った取引が盛り上がりにくかったことなど多数挙げられるが、決定打を特定するのは難しい。

 2022年以降、東京については国際金融都市構想が掛け声として存在しているものの、税制や言語、人材の壁が非常に厚いと言わざるを得ず、その厳しい現実がBIS調査により裏付けられてしまったと言えそうである。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2025年11月7日時点の分析です

【訂正履歴】図表3が間違っていたため、正しいものに差し替えました。(2025年11月10日11時01分)

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中