英ポンドに接近しつつある人民元のシェア
BIS調査では、通貨別や国・地域別の取引シェアが話題になりやすい。なお、通貨別のシェアに関しては、1つの取引が必ず2通貨を含むため両通貨分の数字を集計する結果、合計は200%で計算される。ゆえに、合計100%の尺度で考えるには2で割れば良いが、ここでは原典に沿って200%の尺度で議論を進める(図表②)。
【図表②】

2025年の通貨別シェアは米ドルが89.2%の1位で、2位のユーロ(28.9%)と大きく差をつけている。これに3位の円(16.8%)、4位の英ポンド(10.2%)、5位の人民元(8.5%)が続く。
図表②は入手可能な1998年以降のシェア推移を概観したものだが、この上位5通貨の変動は基本的にはない。2025年4月は「解放の日」を含む激動の時期であり、「米ドルの基軸通貨性」に疑義が付き始めたタイミングでもあるが、今回の調査結果だけを踏まえる限り、決済通貨としてのドルの絶対的地位はまだ盤石であるように見受けられる。
もっとも、米ドル以外の通貨では少しずつ変化が起きている。この変化は、①人民元の台頭、②ユーロの凋落、③取引通貨の多様化といった3点から解説可能である。
まず、①は顕著である。英ポンドと人民元のシェアは明らかに縮まっており、3年後の調査では逆転している可能性もある。今回、英ポンドは前回対比▲2.7%ポイント、人民元は+1.5%ポイントの変化だが、同様の動きが続けば優に逆転が生じる。
ちなみに、今回調査において▲2.7%は最大の下落幅、+1.5%ポイントは最大の上昇幅である。
後述するように、英ポンドの取引シェアが落ち込んだのは2020年にEU離脱(ブレグジット)が完了したことの影響である。人民元の取引シェアが急伸しているのは恐らくロシアの立ち回りなどが影響していそうである。