IT投資をコストと考える日本企業
日本企業がAIやITへの投資を進めない背景には、文化的な要因もあります。
多くの企業では、ITやデジタル関連の支出を「投資」ではなく「コスト」として見ています。
経営会議でAI導入の提案をしても、「今の業務で問題ない」「その費用対効果は?」といった慎重な反応が返ってくるケースが多いのです。
もちろん、慎重さは経営にとって重要な姿勢です。しかし、AI時代のスピード感に対しては、過度な慎重さがかえってリスクになります。
欧米では、AI導入の失敗を「学習コスト」と捉え、積極的に実験を繰り返しています。
日本では、失敗を避ける文化が根強く、試行錯誤の機会自体が失われているのです。
もう一つの要因は、経営層のIT理解の乏しさです。
多くの企業で意思決定を担うのは50〜60代の経営陣ですが、その世代はインターネット以前の経営スタイルを身につけてきた層でもあります。
AIやクラウドの概念を十分に理解できていないまま、現場に「効率化を進めよ」と指示を出しているのが現状です。
若手の従業員は「経営陣にAIの話をしても、ピンと来ていない。AIという言葉を出すと、むしろ怪しいものと見なされることもある」と語っていました。
このような意識の差が、組織全体の変革スピードを鈍らせています。
ここで思い出しておきたいのは、1990年代の日本が世界でも有数のIT先進国だったという事実です。