小さなDXの積み重ねが大切

 その第一歩として、紙やエクセルで管理されている情報をクラウドに移し、部門間で共有できる体制を整える必要があります。

 この「小さなDX」が積み重なって初めて、AIの導入が意味を持ちます。

 クタフターのようなスタートアップが注目されるのも、こうした現場密着型の支援を行っているからです。

 単にAIを導入するのではなく、業務の見える化から伴走する――。こうした地道な取り組みが、AI投資の裾野を広げていくカギになるでしょう。

 AIは、もはや特別な技術ではなく、経営の必須インフラです。

 生成AIの登場により、ホワイトカラーの仕事が急速に変化しつつあります。AIを「遠い未来の話」として避ける企業は、数年後に競争力を失うリスクが高いと言えるでしょう。

 重要なのは、完璧なシステムを一気に導入することではありません。まずは社内のデータを見直し、米オープンAIの生成AI「カスタムGPT」などに学習させる土台を作ること。

 そして、現場が使いやすいツールを選び、小さな成功を積み重ねることです。AI投資の第一歩は、「人が変わる」ことから始まります。

 日本が再び世界で存在感を示すためには、AIへの投資を「コスト」ではなく「未来への積立」として捉える意識改革が必要です。

 かつての製造業のように、時間をかけて積み上げていく姿勢こそが日本の強みでした。

 その強みをデジタルの時代にも生かすことができれば、日本企業はまだ十分に巻き返せます。

 AI投資の遅れは、いまや国全体の生産性にも直結しているのです。エクセルから脱却し、データとAIを経営の中心に据えること。

 それが、日本経済が再び成長軌道に乗るための第一歩なのです。