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表計算ソフトで十分、に潜む危険
AIという言葉が日常的に使われるようになって久しいですが、日本企業のAI投資は依然として低調なままです。
スタートアップ経営者や投資家の間ではこの問題意識が共有されているのに比べ、大企業などの現場レベルでは「表計算ソフトの『エクセル』で十分」という声が根強く残っています。
今回は、AIスタートアップ「クラフター」(東京・港区)の小島舞子社長の話をきっかけに、日本のIT・AI投資の停滞の背景を探ります。
小島さんは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援に関わる中で、「日本の多くの企業では、いまだに業務の中心がエクセルである」と語っています。
AIを導入しようにも、データが紙やエクセルファイルに散らばっており、そもそも分析可能な状態になっていない。
そのため、AIを使う以前に「データの整備」から始めなければならないのが実情です。
小島さんの言葉に象徴されるように、日本企業では30年前と同じようなIT基盤の上で業務が回っているケースが少なくありません。
経理や販売管理、顧客情報の処理など、すべてがエクセルベース。一見便利なツールに見えますが、組織全体のデータを連携させるには限界があります。
AIが力を発揮するのは、大量のデータを統合・解析できる環境があってこそですが、その基盤すら整っていないのが実情なのです。
データで見ても日本のIT投資の停滞は明白です。
1995年を基準に見ると、米国ではIT投資が約10倍、英国では8倍に増加しています。一方、日本はわずか1.8倍。
この数字が意味するのは、単なる投資額の差ではありません。
米国企業がデジタルを経営の中心に据え、ビジネスモデルそのものを変革してきたのに対し、日本企業は「現状の業務を少し便利にする」程度に留まってきたということです。
その結果、欧米企業はAIやクラウドの時代にスムーズに移行できましたが、日本は古いシステムの上にAIを上乗せするしかなく、効率化の限界に直面しています。