9月16日火曜日、ロンドンのウェストミンスター大聖堂で行われたケント公爵夫人のレクイエムミサの後、退場する英国のアンドルー王子(左)と英国国王チャールズ3世(写真:AP/アフロ)

国王は弟を切り、王室の自浄作用を示す必要に迫られていた

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[ロンドン発]少女買春で起訴され、勾留中に自殺した米富豪ジェフリー・エプスタインとの関係や性交疑惑で「ヨーク公爵」の称号や授与された栄誉の不使用を表明したアンドルー英王子(65)=王位継承順位8位=から王子の身分や30室を擁するロイヤルロッジで住む特権がすべて剥奪された。

 バッキンガム宮殿が10月30日夜、チャールズ国王の弟アンドルー王子は全称号・敬称・栄誉を剥奪され、今後アンドルー・マウントバッテン・ウィンザーとして暮らすと発表した。日本の皇室でたとえるなら天皇が弟宮を強制的に「臣籍降下」させるのと同じことで、前代未聞の事態だ。

 先月発売されたバージニア・ジュフリーさん(4月に自死)の体験記『ノーバディーズ・ガール―私は誰のものでもない』では、17歳の彼女がロンドン、ニューヨーク、米ヴァージン諸島で3回にわたりアンドルー王子との性交を強いられた様子が生々しく記されている。

 英国では議会慣行上、議員が王族の“行為”を一般質疑で取り上げることには強い制限があり、原則として扱いにくい。称号剥奪には国王の同意か、議会による法改正が必要だった。議会でアンドルー王子の説明責任、称号剥奪、ロイヤルロッジ使用の議論を求める声が高まり、国王は王室の自浄作用を示す必要に迫られていた。