アンドルー王子と「特別な信頼関係」を構築していた中国人スパイ

 22年の高等法院裁判でアンドルー王子の一家にトルコ実業家夫妻から110万ポンド(約2億2000万円)が支払われていたことが判明。内訳はアンドルー王子に75万ポンド(約1億5000万円)、セーラに35万ポンド(約7000万円)、娘の1人に2万5000ポンド(約5000万円)だった。

「一連のスキャンダルの中にはカザフスタンから500万ドル(約7億7000万円)の賄賂を受け取った件もある。彼は中東で多くの時間を過ごし、現地で宮殿を与えられている。現地の王族とも非常に親しい。私は金が流れたのは間違いないと思っている」とロウニー氏は指摘する。

 アンドルー王子と「特別な信頼関係」を構築していた中国人実業家を、英国政府は“スパイ疑惑あり”として入国禁止にした(当人は否定)。英企業GSKやマクラーレンに中国ビジネスについて助言していたこの人物は中国共産党の中央統一戦線工作部(中央統戦部)のため働いていたとみられている。

 ロウニー氏によれば、エプスタインは要人の弱みを握って外国勢力に情報を流す「情報ブローカー」でもあった。エプスタインはアンドルー王子に関する機密映像や文書をイスラエルのモサド、サウジアラビア当局、カダフィ独裁下のリビア情報部に売る計画を誇示していたという。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。