写真:SunnySide/イメージマート
目次

コロナ禍の衛生意識の向上や、偏った食生活により、現代人の腸内細菌の種類が減ってきているという研究結果がある。また、腸では幸せホルモンである「セロトニン」の9割が作られているため、腸内環境を整えることは、精神的な安定にもつながっていくという。私たちの健康の鍵を握る「腸内細菌」について、最新の研究結果から、令和の新常識を紹介する。(JBpress編集部)

(太田華代、腸活コンサルタント)

※本稿は『やってはいけない腸活』(太田華代著・手島麻登里監修、三笠書房)より一部抜粋・再編集したものです。

現代人の「腸内細菌の種類」が減ってきている

 腸内細菌というのは非常に多様で、ビフィズス菌、乳酸菌、大腸菌などをはじめ、現在1000を超える種類が確認されています。

 その中で、理想としては100種、少なくとも80種くらいは腸内に定着していてほしいところです。

 しかし、実際にはこの腸内細菌が50種類を切っているケースも多く、なかには30種類くらいしか見えない人もいます。

 コロナ禍の除菌ブームや衛生意識の向上などの影響によって、「現代人は腸内細菌の種類が少なくなっている」のです。

 こういう状態にあって、前述したような「健康に良い○○は絶対に欠かさない」とか、「無農薬の野菜しか食べたくない」といった理由で偏った食事をしているとしたら、それは非常にマズいこと。

 とにかく意識的にいろいろなものを食べて、そこに付いている多様な菌を取り込むことが、今後ますます大事になると言えます。

「善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割」という説は間違っていた!

 では具体的に、どんな菌が、どのくらいの割合で存在するのでしょうか。

 良い菌としては、酪酸菌が20%、ビフィズス菌が10%、乳酸菌(虫歯などの口腔内細菌を除く)が5%はいてほしいところです。ほかにもさまざまな種類の「腸に良い菌」が存在しているのですが、それらすべての合計が40%くらいで推移するのが理想です。

 また、悪い菌に関しては2%前後いる程度が理想で、残りは「よくわかっていない菌」になります。

 実は、世間で頻繁に用いられている「善玉菌・悪玉菌・日和見菌」という概念は、最前線の研究者からするとあまりに古いものとなっています。

 これまで腸に関する書籍やテレビの情報番組などでは、日和見菌について「善玉菌が多ければ善玉菌の味方をし、悪玉菌が多ければ悪玉菌の味方をする」と紹介されてきました。

 この考えでは、「とにかく善玉菌を増やして悪玉菌を減らせば、日和見菌もそれに従う」ということになってしまいますが、そんなに単純なものではありません。

 実際には、「善玉とも悪玉とも言いがたい菌がたくさんいて、その中には良い働きをする菌もいる」と言ったほうが正しいのです。

 ましてや、「善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割」という説は、現在ではすっかり否定されています。

かつて良いバランスだとされていた腸内環境は、現在は否定されている。(提供:Kei/イメージマート)

 ある研究者によれば、「1割も悪玉菌がいたら、人はとっくに死んでいるよ」ということでした。

 たしかに、悪玉菌にはO157やサルモネラ菌などの食中毒を引き起こす菌や、がんの発症に関わる菌もあり、普通なら1割もいるはずがないのです。