公明党の連立離脱で後退していた「高市トレード」ですが、足元では自民党と日本維新の会が政策協議を始めたことで、再び思惑買いの動きも見られます。政局の混乱が続く中、日本経済とマーケットはどのように動いていくのでしょうか。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏と、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部チーフグローバルエコノミストの河田皓史氏に、JBpress編集長の細田孝宏が聞きました。2回に分けてお届けします。
※JBpressのYouTube番組「JBpressのナナメから聞く」の内容の一部を再構成したものです。詳しくはYouTubeでご覧ください。(収録日2025年10月16日)
後編:【新政権で株・為替は?】もし米国株が大暴落するならきっかけは…米国債に潜む危険な兆候、次の安全資産とは
政局混迷でも財政拡張路線は変わらず
——石破総理の辞任表明から高市早苗・自民党新総裁の誕生、公明党の連立離脱など政局が混迷しています。マーケットの動きをみなさんはどう見ていますか。
唐鎌大輔・みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト(以下、敬称略):高市氏が新総裁に就任したことで「高市トレード」、いわゆる「リフレトレード」が起きました。これは2012年の第2次安倍政権誕生後の円安・株高の再来を期待する動きです。その後、自公連立が崩壊し株価はかなり戻る一方、円相場や円金利に大きな変化はありません。
結局、誰が首相になっても財政は拡張路線との見方が浸透しており、円は買いにくい状況です。高市氏になろうと、玉木氏になろうと、少数与党の構図は変わりませんから。
首相は誰に?写真は自民党の高市早苗新総裁(写真:ロイター/アフロ)
——景気を刺激するための財政拡張路線で円安が進めば、結局、物価高で国民生活が苦しくなるのではないですか。矛盾していませんか。
唐鎌:おっしゃる通りです。減税や給付金を競うような政策がインフレをさらに煽る懸念があります。インフレに苦しんでいる人が、インフレを焚き付けそうな政策を支持するというスパイラルに陥っています。欧州債務危機後のヨーロッパと似ており、私は最近「日本政治の欧州化」だと見ています。
河田皓史・みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部チーフグローバルエコノミスト(以下、敬称略):日本は二大政党制を志向してきたように見えますが、今はドイツのような多党制に向かっています。連立政権の組み替えが頻繁に起こり、政治がなかなか安定しません。結果として政策が定まらず、国の方向性も見えにくくなっています。