カタール、トルコ、エジプトの動き
約2年続いたガザでの戦争が停戦に至るまでは曲折がありました。
およそ1200人が死亡した2023年10月のハマスによるイスラエル襲撃に対し、イスラエルは報復としてガザを激しく攻撃。ガザではこれまで約6万7000人が犠牲となり、住居の90%が破壊されました。米国のバイデン前政権による2度の停戦合意はいずれも長続きしませんでした。
今回の停戦合意のきっかけは、ことし9月9日にイスラエルがカタールに滞在するハマス幹部の殺害を狙って、首都ドーハを空爆したことです。

カタールはアラブ諸国の中でもハマスとの関係が深く、交渉の窓口を確保しておく名目でハマス幹部の滞在を容認してきました。和平に向け重要な役割を担ってきたカタールの主権を侵害する空爆は、米国がイスラエルに厳しい目を向けるきっかけになったのです。
トランプ大統領は9月29日、ホワイトハウスを訪れたイスラエルのネタニヤフ首相に対し、カタールのムハンマド首相兼外相に向けて電話で謝罪させる異例の措置を取りました。その場にカタールのサワディ戦略相を同席させる気の遣いようです。
一方、トランプ氏は各国首脳が米ニューヨークに集まる9月下旬の国連総会に合わせて、カタールに「20項目」の和平案を提示。カタールはこの案を基に、ハマスに合意受諾への圧力をかけていきました。
和平への交渉にはトルコも一役買っています。
実はハマス幹部はトルコにも拠点を持っており、長年のつながりがあるのです。エルドアン大統領はトランプ氏からの要請を受けて、カタールとともにハマスとの折衝にあたりました。停戦後のガザに軍を送り、死亡したとみられるイスラエル人の人質を捜索する意向も示しています。
エジプトはガザと境界を接しており、支援物資の輸送などに協力してきました。
米カーター大統領が仲介した1979年のキャンプ・デービッド合意により、エジプトはアラブ諸国の中で最初にイスラエルを国家として承認した国であり、現在もパレスチナとイスラエルの両方と関係を維持しています。今回のシャルムエルシェイクでのハマスとの折衝にも参加し、ガザ復興への関与に意欲を示しています。
こうして見ると、米国主導のガザ停戦合意もカタール、トルコ、エジプトの仲介努力がなければ成立は難しかっただろうと言わざるを得ません。もし停戦合意が続いてガザの復興に進んでいくとすれば、この3カ国だけでなく、さらに多くの国々の協力が不可欠となるでしょう。