暗殺されたチャーリー・カーク氏の追悼式に集まった保守層(写真:AP/アフロ)
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 米国のトランプ政権が、政治的に対立する「左派」への攻撃姿勢を強めています。政権に近い保守派活動家が暗殺された事件を取り上げ、「急進左派の仕業」と決めつけて圧力を強めているのです。民主党が市長を務める都市には治安対策を名目に州兵を派遣する決定も相次いでいます。なぜこうした対立が起き、拡大しているのでしょうか。やさしく解説します。

西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス

カーク氏暗殺で「左派攻撃」が激化

 暗殺事件は9月10日、米西部ユタ州の大学で起きました。トランプ政権を支援してきた31歳の活動家でSNSのインフルエンサーでもあるチャーリー・カーク氏が学生らの集会で演説の最中、銃で撃たれ死亡したのです。

 カーク氏はフェミニズム(女性解放運動)や社会的少数者の権利保護を批判する右派組織の代表で、2024年の大統領選ではトランプ陣営のために若者の票掘り起こしに力を発揮しました。

 カーク氏の死はトランプ氏にとって大きな損失であり、トランプ氏は事件後、ただちに「急進的な左派が国家に大きな損害を与えた。この問題は必ず解決してみせる」と断言しました。そして、トランプ氏は犯人に死刑を要求しました。

 トランプ氏の言う「左派」がどのような人々を意味するかは、はっきりしません。トランプ氏が進める移民排斥やイスラエル寄りの政策に反対する勢力、あるいはジェンダーや人種間の平等推進など、保守派とは異なる政治姿勢を取る人々を指すとみられます。

 カーク氏殺害事件では、警察が22歳の容疑者を逮捕し、取り調べています。ユタ州知事は「容疑者は左派思想の持ち主だった」としていますが、知事の言う「左派思想」は何を指しているのか、明確にはなっていません。事件の真相はなお不明です。