戦後80年の所感を述べる石破茂首相(10月10日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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 2025年10月10日は、後に教科書に載る日付になるかもしれません。

 この日起こった2つの出来事。その連関を指摘する記事をあまり見かけませんでしたので、一個人、といっても、学識経験者として政府や自治体に協力してきた一人として、2つの「星座」の連関について記してみたいと思います。

 その2つの星座とは石破茂首相の「戦後80年首相所感」と、26年間続いた自公連立政権を「白紙撤回」という強い調子でご破算にした公明党・斉藤鉄夫代表による「連立離脱」の表明です。

お役所仕事に阻まれたコロナ時の下水PCR

 まず公明党の連立離脱から検討してみます。

 私が公明党に対する見方を大きく変えたのは2022年、参院選直前のことでした。

 当時、私は公務として東京大学ゲノムAI・生命倫理研究コアの主幹として、東京都世田谷区の「新型コロナ感染症・後遺症全数調査」などに取り組んでいました。

 コロナ蔓延が始まった2020年、私は日本よりも被害状況が甚大だったドイツ連邦共和国、ミュンヘン工科大学との協働プロジェクトを通じて「下水PCR」が、流行の早期探知と対策に有効であることを知りました。

 例えば、交通ターミナル駅のトイレの汚物槽で、系統だったPCR検査を実施する。

 あるいは道路直下に埋設された下水管で、さらには成田空港や関西空港に着陸する航空機のバキューム回収物を対象に、適切なPCR検査を実施する。

 そうすれば、「水際防疫」にも極めて有効であるはずです。こうしたアウトラインを、まずミュンヘン工科大学との議論で固めました。

 たまたま私は水環境工学の泰斗で東京大学工学部都市工学科名誉教授、また元国立環境研究所理事長でもある大垣眞一郎さんと親しく、実は高校の先輩でもあり電話番号が手元にありましたので、ご自宅におかけして相談してみました。

 東京大学工学部都市工学科教授の古米弘明(当時、現中央大学・研究開発機構教授)さん、大垣さんの元指導学生で都市工学科教授の片山浩之さん、さらに片山さんの指導学生だった北海道大学工学部の北島正章助教(当時、現・准教授)などの真摯なお取り組みがあることが分かり、協力していこうということになったのです。

 ところが、役所が動きません。日本の役所は小泉純一郎元首相時代の統廃合で呉越同舟状態が随所に生まれています。

「交通拠点」で「下水PCR」は無理。

 なぜなら、役所は「国土交通省」だけれど「交通拠点」は「旧・運輸省系統」、「上下水道」は「旧・建設省系統」。

 当時、私は両者の間の溝は日本海溝よりも深くその連携は不可能という印象を受けました。

 その溝の深さは、都市工学科OBのネットワークを通じて、当時活躍されていた和泉洋人・内閣総理大臣補佐官(当時)がサジを投げたと聞いています。それでお察しいただけると思います。