韓国・ソウル中央地方裁判所に到着した統一教会の韓鶴子氏(写真:AP/アフロ)
(立花 志音:在韓ライター)
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教祖である文鮮明(故人)の妻、韓鶴子氏が韓国で起訴された。起訴日は2025年10月10日。日本ではちょうど、自民・公明の連立が解消され、石破首相が「戦後80年の談話」を発表した日である。
韓国の特別検察は、9月23日から韓鶴子氏を拘束していた。容疑は政治資金法違反と請託禁止法違反。いずれも、宗教団体の資金が政治に流れた疑いである。
宗教とカネ、政治との癒着──。どれも別に珍しいニュースではない。しかし、筆者はこのニュースを聞いて二つの感情を抱いた。
一つは、韓国政治の深部に流れ込んだその資金の多くが、日本人信者の献金によるものであろうという憤り。もう一つは、宗教団体への国家的介入が、やがて“信仰の自由”を脅かすのではないかという憂慮である。
旧統一教会に関しては、安倍晋三元首相が暗殺された後に、現役信者や元信者に聞いた話をお伝えした(参考記事:韓国に嫁いだ統一教会日本人妻の歴史観と宗教2世の話)。今回も、何人かの知人信者に話を聞いたが、前回の答え合わせ的な話を聞くことになった。
旧統一教会は長年の間、以下のような自虐史観的な考え方を日本人信者に植え付け、彼らの良心の呵責につけ込み、天文学的な額の献金を集めてきた。
日本は韓国を不法に侵略し、この国の財産も韓国人としての名前も、女性も略奪したのだから、韓国人が納得するまで謝罪しなければならない。それは、日本政府がしなければいけないことなのだけれど、日本政府が噓をついているから、自分たちが代わりに韓国に謝罪するのだ。そして、日本の統一教会は日本の過去の罪滅ぼしとして、韓国と世界のために献金し続ければならない──という考え方である。
戦後の日本人が抱えてしまった自虐史観は、被害者であることを主張する韓国人にとって、非常に都合が良かっただろう。日本人の高い倫理観に相対した自責の念から出される献金を、いとも簡単に搾取できる絶好のチャンスだったのではないか。