
(立花 志音:在韓ライター)
「ママ!宿題が終わった!!ハンナちゃんの家に遊びに行ってくる。スジンとボミも一緒に行く約束をしているの」
6月3日、韓国大統領選投票日のことである。韓国では、大統領選挙も国会議員選挙も平日に実施され、その日は臨時公休日となる。当然、子供たちの学校も休みになり、週末とはまた少し違う「子供たちが暇になる日」になった。(韓国では選挙投票日は会社、学校が休みになる)
急いで家にあるお菓子をあるだけ袋に入れて、娘に持たせた。
小学2年生の娘でも、その日がなぜ休みなのか知っていた。自営業の夫が仕事から帰ってくるなり、誰に投票したのか聞いてきたくらいだ。
我が家は義父母から一家そろって保守派政党を支持しているが、それをリアル世界ではあまり口外できない。我が家は、韓国左翼の一丁目一番地とも言える韓国南西部の全羅道に住んでいるからだ。
この地域で社会生活を送りながら、保守派政党を支持しているようなことを言えば、不利益を被ることが実際にある。日本人には信じられないかもしれないが、実際に夫も経験していることだ。
今回の第21代韓国大統領選挙では、大方の予想通り左派の“ラスボス”李在明氏が当選した。前科4犯、現在もいくつかの罪で裁判が進行中の被告人大統領の誕生である。もうこの説明に驚く人も少なくなっただろう。
翌日には就任式が行われた。新しい大統領は分断の政治を終わらせるとか、国益を考えて実益のある外交をするとか、対話を通じて朝鮮半島の平和を構築するとか、とても聞こえの良いスピーチをしていた。
そして、景気回復を一番の公約としている彼は、財政出動による経済の循環を常にアピールし、経済の停滞と物価上昇で苦しむ市民に対して、現状を改善できるというイメージをずっと提示し続けている。
それは3年前、尹前大統領に敗北した前回の大統領選挙の時から変わっていない。
だが、補助金はしょせん税金のバラマキである。各家庭に補助金を出したとしても、かえって物価が上がるだけだ。これは筆者の住む地方でも、実際に証明済みだ。