NHKキャスターの言葉に夫が入れたツッコミ

 就任式の後は日本でもさまざまな報道がされているのを見かけたが、夫が意外な放送局に意外なツッコミを入れた。

 NHKワールドをテレビで見ていた時に、李在明大統領の就任を受けて「今後の日韓関係がどれだけ安定した位置を作れるのかがポイントだ」というキャスターの言葉に、すかさず夫は「安定なんか必要ないだろう」と言ったのだった。

 続けて、「この記者は李在明の過去の発言を知っているのか。つい最近だって、歴史問題には今まで以上に厳格に立ち向かうが、経済協力は積極的にしたいって言っていた。それって要は乞食みたいにお金だけせびるってことだろう」と言ったのである。

 あまりにもファクト過ぎて、筆者も笑うしかなかった。この国は非常に厄介な人を大統領に選んだものである。

 個人的に今回の選挙戦を振り返ると、保守派の争点・論点の脆弱さを見せられたような気がする。

 前回の記事で、兵役中の長男が休暇で帰ってきた話をお伝えした。息子は休暇の間に事前投票をして任務に戻っていった。その前夜、息子は筆者にこう話した。

「すごく悩んだんだけど、金文洙(キム・ムンス)に投票してきたよ。李在明が当選するのを阻止しないといけないじゃん」

 今回の大統領選挙で保守派は候補者の一本化に失敗して分裂した。

 息子が最後まで悩んだ候補は李俊錫候補で、尹大統領と袂を分かち新党を結成した40歳の最年少候補だった。彼はハーバード出身で、頭の回転が速く、ディベートにめっぽう強い。息子が支持するのも良く分かる。

 実際に18歳から29歳の男性の間では一番人気で、年代別得票率では24%の李在明氏、36.9%の金文洙氏を抑えて、なんと37.2%だった。

 それにもかかわらず、息子は冷静に祖国の未来を考え、大人の選択をしたのだ。

 選挙で誰に投票するかは全くもって個人の自由だが、息子は初めての選挙でここまで考え、決断したことは親として誇らしいの一言に尽きる。

 だが、保守派にとっては、これが今回の選挙における最大の問題点だった。「李在明を大統領にさせないこと」以上の大義と目標を、候補者側も有権者も見つけることができなかったのである。

 残念なことに、息子が下した結論以上のイデオロギーがこの国の保守層には存在しなかった。