
(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
韓国の新大統領に就任した李在明(イ・ジェミョン)氏――。過去の行動や発言から、日本では同氏のことを「反日の旗手」ととらえられてきた。李在明氏の過去の発言内容が独り歩きしていた頃は、正直、筆者もそう考えていた。
当面は「反日封印」で動きそうな見通し
李氏は京畿道知事として「親日残滓清算プロジェクット」を立ち上げ、257名の親日人物などに対する清算作業を行った。さらに発言内容も過激で、「軍事的な側面で見れば日本は依然として敵性国家」と述べたり、福島原発処理水の海洋放出に際しては「核汚染水の放流は太平洋沿岸国に対する戦争を宣言したもの」などと主張したりしてきた。
日本人には、こうした李氏の過去の言動を知っている人が少なくないので、「大統領になった李氏は日韓協力を言い出す」と考える人はおそらく少数派だったはずだ。
しかし当の李在明氏は、尹錫悦政権が非常戒厳で倒れ、大統領選が視野に入ってきたあたりから、「日本国民の親切さ、勤勉さ、美しい風景に魅了された」「私は日本への愛情がとても深い」などと、手の平を返したような発言をするようになった。
さらに大統領選立候補表明後は、「現実的に韓米同盟が非常に重要であり、韓米日協力関係も非常に重要」「日本は重要なパートナー」「前向きな未来志向で対応、堅固な韓日関係の土台を築く」などと発言し、日韓関係を前向きに進める意向を強調するようになった。
そして今月3日に行われた大統領選に勝利した翌日の就任宣誓では、「堅固な韓米同盟を土台に韓米日の協力を強固にし、周辺国との関係も国益と実用の観点からアプローチする」と述べたのだった。
李在明氏のこうした立場の豹変は、日本国内でも意外と受け止められ、真意はどこにあるのかと戸惑いが広がっている。