李在明氏の立場の変化は大統領という職責からくるもの
しかし、改めて冷静に考えてみれば、李在明氏の立場の変化は、何ら驚くべきことではないと言えるだろう。
これまで李在明氏は、貧困家庭に育ち、人権弁護士より社会活動を始めた経緯から、戦争被害者には同情的であり、政界に出ても城南市長、京畿道知事を歴任はしたが、中央政府の勤務や国会議員の経験はなく、外交とは無縁であった。このため李氏の発言内容には、外交的な考慮は一切なく、市民向けの過激な言動だけが目立っていた。
ただしこれは、“裸一貫”からのし上がってきた李在明氏の“人気取り政策”の側面が強かった。過激な発言を政治的なパフォーマンスとすれば、李氏の思想や理念が本当に極度の「反日」なのか、一概に言えないであろう。
さらに大統領となれば、外交の責任者となる。反日を煽ることは現在の韓国の置かれた経済状況や、朝鮮半島の地政学的状況から大きなマイナスとなる。こうした状況を踏まえ国益を優先した「実用主義」という立場を取ることにしたものであろう。
一方で李在明氏には過去の発言が示すように「反日の素地」は残っており、日韓関係が緊迫する場面では、尹錫悦前大統領のように、日本との協力関係を守るために身を挺するかどうかは疑問である。

もしも韓国が反日に逆戻りすることになれば、日本ばかりか韓国の国益を損なうことになる。日本にとっても北朝鮮の脅威に対峙するためには、日米韓の安保協力が緊要である。米国のトランプ大統領にこの地域への関心を失わせないためにも韓国の強固な協力姿勢は不可欠である。
李在明氏の過去の言動が示すように、日韓協力姿勢が盤石でないならば、日本としてそうならないよう、韓国に対して働きかけていくことが緊要である。