「不適切会計」「不正会計」「粉飾決算」の違い

 日本公認会計士協会の公表資料によると、「不適切会計」とは、「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、またはこれを誤用したことによる誤り」を指します。単純に言えば、損益計算書や貸借対照表などを作成する際のミスのこと。

 この段階では、不正の意図は明確になっておらず、経理・会計担当者の勘違い、解釈ミス、知識不足などによって生じたものも含まれます。ニデックの場合、現状ではこのカテゴリに相当すると言って良いでしょう。

 これに対し、不当・違法な利益を得る目的を持って財務諸表を意図的に改ざんするケースが「不正会計」です。経営の真の状態を隠すために必要な情報を隠す行為も、これに該当します。

 不正会計のなかでも、さらに悪質度の高いものが「粉飾決算」です。粉飾決算は実際の経営状態を正確に反映させず、実態よりも良い経営状態であると意図的に偽った財務諸表を作成する行為です。自社の信用を高めるための詐欺的な行為であり、決して許されるものではありません。

 信用力を高めて金融機関から良い条件で融資を受けようとしたり、株価下落や上場廃止を回避したりするために行われるケースが多いとされています。また高額の役員報酬を得るために財務諸表を改ざんする事例もあります。

 粉飾決算とは逆に、財務諸表の内容を実際より悪く偽装するのが「逆粉飾決算」です。法人税や株主配当を少なくする目的が多いとされています。

 会計の不正は、取引先や金融機関・投資家に真実とは違う誤った情報を伝え、適正な判断の機会を奪い取ることに直結します。そのため、民事責任とは別に、不正に関わった経営陣らが刑事責任を問われるケースも少なくありません。主な罰条には、特別背任罪(10年以下の懲役、または1000万円以下の罰金)、有価証券報告書虚偽記載罪(個人は特別背任罪に同じ。法人は7億円以下の罰金)、違法配当罪(5年以下の懲役、または500万円以下の罰金)などがあります。

 では、過去にどんな不正会計があったのでしょうか。実例を見ていきましょう。