武騎手とサイレンススズカの縁と絆
亡くなる1年9か月前に行われた新馬戦で、サイレンススズカと同じサンデーサイレンスを父にもつ牡馬プレミアートに騎乗していた武騎手は、2着馬に7馬身の差をつけて圧勝したサイレンススズカの走りを見て、そのフォームのすばらしさに驚き、痛い馬を逃した、と悔しがったそうです。
サイレンススズカと、その8年後に生まれた三冠馬ディープインパクトの両馬に騎乗した武豊は語っています。
「ディープに勝つためならスズカに乗る。スズカに勝つためならディープに乗る」
逃げ馬のサイレンススズカと正反対の追い込み馬ディープインパクトとの夢の対決は、AIならどう予想するのでしょうね。私の予想? 「G1史上、初の同着」ということにしておきましょう。
なお、名馬3頭の生没年は次のようになっています。
・ライスシャワー(1989~1995)
・サイレンススズカ(1994~1998)
・ディープインパクト(2002~2019)
サイレンススズカの死後、関連本が数多く刊行、かつて国民的なスターホースだったオグリキャップに負けないほどのムックや書籍が発売されました。最後のレースの衝撃度が従来の人気をさらに高めたからなのでしょう。
私は今流行りのゲームをやらないのでよくは知りませんが、「ウマ娘 プリティーダービー」というゲームやアニメなどでは、サイレンススズカも人気だそうです。サイレンススズカが旅立った頃にはまだ生まれていなかった若者たちが、こうしたバーチャル世界でサイレンススズカと共存しているかと思うと不思議な気がします。
競泳バタフライの長谷川涼香さんやアイドルタレントの鎮西寿々香さんは、サイレンススズカにちなんで命名されたとか。鎮西寿々香さんは、1998年11月24日生まれで、サイレンススズカが旅立った23日後に生まれていることから、競馬ファンだった両親が名付けたとのことです。
サイレンススズカのオーナーだった永井啓弐氏は三重県在住の実業家で、サーキットで知られる地元・鈴鹿にちなんで愛馬に『スズカ』と名付けることが多くありました。G1馬のスズカマンボ、スズカフェニックスなどの馬主でもありましたが、残念ながら今年の7月23日に亡くなりました(享年90)。ちなみに息子さんたちはレーシングドライバーだそうです。
私の仕事場にはサイレンススズカとエルコンドルパサーの写真が並んで飾られています。両雄が交えた1998年10月11日行われた毎日王冠のレースは、私の「生涯ベストレース ベスト10」に名を連ねています。
(編集協力:春燈社 小西眞由美)
