16日、日経平均株価は一時、史上初となる4万5000円を超えた(写真:共同通信社)
(白木 久史:三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト)
日本株の上昇が勢いを増してきました。8月2日付の当コラム「日本株、上昇トレンドへ本格転換か…日米「とんでもディール」で出遅れ日経平均も最高値更新へ、そして上値めどは?」では、①米国株とドル円レートの動き、②企業業績、③バリュエーションの3つの視点から、日経平均株価がレンジ上限を超えて大きく上昇するシナリオをお伝えしました。
当時、市場では「日本株は上がり過ぎ」との見方が大勢を占めていましたが、その後、日経平均株価は史上最高値を更新して大幅高となり、9月16日には一時4万5000円台を付けました。
一般に、株価は経済指標などに先んじて動く「先行指標」とされていますが、今回は1カ月半ほど前に立てた「日経平均の大幅上昇」という仮説について、その後明らかになったデータなどを確認しながら「答え合わせ」をしていきたいと思います。
景気不安でも上がる株
このところの日本株の上昇相場は、参議院選挙の3日後の7月23日に急転直下で日米の関税交渉が決着したことをきっかけに始まりました。しかし、エコノミストを始めとする市場関係者の多くは、「トランプ関税の影響が本格化するのはこれから」として、日本経済の行く末を懸念する意見が大勢でした。このため、にわかに動き始めた株価について、「景気不安の残る中での不自然な株高」との見方が多数派だったように思われます。
しかし、関税交渉の結果が想定よりは「まし」だったこと、そして、市場が最も忌み嫌う「先行き不透明感」が後退したことから、市場関係者の心配をよそに日本株は大きく上昇を続けることとなりました。さらに、その後発表された経済指標では、4-6月期の名目GDP成長率が大幅な伸びとなり、7月の実質賃金が7カ月ぶりにプラスに転換するなど、日本株の好調と足並みをそろえるような「ポジティブニュース」が市場を駆け巡る事となりました。
中でも、税収や企業業績、そして、株価と高い相関があるとされる名目GDPが前期比年率で+6.6%の大幅な拡大へと改定されたことは、市場に根強かった日本経済への不安を吹き飛ばすには十分なインパクトがあったように思われます(図表1)。

株価は景気の「先行指標」
米国の主要な経済指標の一つに、コンファレンスボード社が発表する「景気先行指数」があります。経済の先行きを占うこの指標には、企業の景況感などとともに米国の代表的な株価指数である「S&P500種指数」が含まれています。つまり、株価は単に景気や企業活動の現在地を測るバロメーターにとどまらず、「先行指標」として有効であることに気付いた先人たちの知恵が、こうした「経済指標」にも活かされていると言えそうです。
冷静に考えれば、実体経済の動きに遅れて発表される経済指標を見ながら、その先行指標ともいうべき「株価」を予測するのは、バックミラーだけを見ながら車を運転するようなものかもしれません。そして、最近の日本経済についてのニュースと株価の関係について「答え合わせ」をしていくと、急な上げ相場に戸惑う専門家たちの「警戒論」よりも株価の「先見性」の方が正しかったと言って良さそうです。