イスラエル軍は9日、カタールの首都ドーハを攻撃した。ハマス幹部を標的にしたという(写真:ロイター/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=62ドルから64ドルの間で推移している。地政学リスクがくすぶる中、原油市場の供給過剰懸念が重荷になり、価格の上限は先週に比べて約2ドル低下している。

 まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。     

 ロイターは9月5日「(OPECとロシアなどの大産油国で構成する)OPECプラスの8月の原油生産量は前月比36万バレル増の日量2784万バレルだった」と報じた。過去の供給超過の穴埋めを迫られている一部の国が増産を放棄したことから、予定されていた増産幅(日量54万7000バレル)を下回った。

 OPECプラスの有志8カ国は9月7日、10月の原油生産量を日量13万7000バレル増加させることを決定した。日量220万バレルの自主減産の終了に続き、来年末まで続ける予定だった日量166万バレルの減産を前倒しで縮小する理由として、先進国の商業在庫が低水準にとどまっていることなどを挙げている。

 さらなる増産が公表されたが、9月の日量54万7000バレルより小幅だったことから、原油価格は急落することなく、1バレル=60ドル台を維持した。

 需要面では、S&Pグローバルが8日「中国は今年に入ってから日量53万バレルのペースで原油在庫を積み増している。中国のハイペースの原油備蓄が世界の原油市場の供給過剰を緩和している」との見解を示した。

 インパクトのある分析結果だと思うのだが、原油価格に買いが入ることはなかった。最近の市場は中国経済のネガティブ材料に反応するが、それ以外には関心がないようだ。

 市場では供給過剰懸念と地政学リスクが拮抗する構図が続いている。