スマホを軸にした経済圏の勝者は誰か(写真:Stanislav Kogiku/アフロ)
電話、カメラ、インターネット、決済サービスなど、スマホに備わる機能と役割はどんどん拡大している。大手企業がスマホ事業へ参入し、スマホを軸にしたビジネス覇権戦争が繰り広げられている。スマホを介するビジネスはこれからどのように拡大する余地があるのか。『スマホはどこへ向かうのか? 41の視点で読み解くスマホの現在と未来』(星海社新書)を上梓したITジャーナリストの西田宗千佳氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
【前編】スマホの使用料、端末代金、スマホの構成部品の種類と生産国……知っているようで知らない身近なスマホの秘密
──「楽天経済圏」などを一例として、携帯電話事業者が銀行を持ちたがる理由について説明されています。「経済圏」とは何でしょうか?
西田宗千佳氏(以下、西田):これは「ポイントがたまる」という言い方にすると分かりやすいと思います。たとえば楽天で考えると、楽天は楽天市場というEコマースのプラットフォームを持っていますが、消費者としては、楽天市場で買い物をしている以上、何かしらポイントがほしいと思うものです。
楽天は銀行や証券サービスも持っていますから、楽天でポイントをためると、それを楽天が提供している他のサービスでも使えるようにして、楽天の提供するサービス圏の中で長くお金を使ってもらえる構造を作っています。
その中の重要な1つのパーツとして組み込まれるのが携帯電話です。
スマホは一度契約すると、毎月何らかの形で使って使用料を払います。そうして楽天モバイルを使って得たポイントが、楽天のカードでの支払いで得られるポイントと一緒になり、ポイントがたまりやすくなる。消費者はお得だと感じて、セットで使いたいと考える。すると、消費者はアマゾンよりも楽天市場で買い物をしようと考えるようになる。こうした仕組みが経済圏です。
決済を軸に、その周りにさまざまなサービスを付けることによってポイントが経済圏の中で回るお金のような存在となり、消費者に還元される仕組みです。
もちろん、同じことはソフトバンクもやっています。ソフトバンクグループはキャッシュレス決済システム「ペイペイ」を提供しています。ペイペイのカードでソフトバンクの携帯電話の料金を支払うと、ペイペイのポイントとして消費者に還元される。
同じようなことはKDDIもやっており、KDDIと三菱UFJ銀行が共同出資して設立した「auじぶん銀行」と、KDDIが提供するキャッシュレス決済サービス「au PAY」との間にあります。NTTドコモも共通ポイントサービス「dポイント」を使って、同じようなことをしています。
消費者の財布を握り、どれだけ自分たちの経済圏の中でたくさん決済をしてもらえるか。自分たちのビジネスの中にいてもらえるか。短期では大した効果はありませんが、長期的な関係づくりの中で大きな利益につなげていくのです。ですから、特にターゲットは若い人たちになります。