トランプ大統領(写真:Pool/ABACA/共同通信イメージズ)
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 トランプ大統領は、関税攻勢で世界経済を混乱に陥れているのみならず、国内でも「リベラル狩り」など、自分の考え方を強制しようとしている。そのような手法は、アメリカ憲法に反する。

習近平やプーチンと五十歩百歩

 トランプは、ハーバード大学をはじめとするアメリカの一流大学に対し、「反ユダヤ主義」などというレッテルを貼って、補助金削減という手段で方針転換を迫ってきた。批判された多くの大学が、「背に腹はかえられない」として、DEI(多様性、公平性、包摂性)施策を見直せというトランプの意に沿うように方針転換を図っている。

 8月12日には、スミソニアン博物館の展示の見直し作業を開始する方針を示した。その目的は、党派的な表現を排除し、歴史を正確に描くことだという。

 調査の結果、120日以内に必要な修正を行うとしているが、何が「正確な歴史」なのだろうか。

スミソニアン米国歴史博物館(写真:共同通信社)

 例えば、奴隷制は、南北戦争に見られるように、その歴史的位置づけは党派によって異なる。ハリエット・ビーチャー・ストウの『アンクル・トムの小屋』とマーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』の違いである。トランプは、アメリカの歴史には奴隷制や人種差別の問題はなかったと主張するのであろうか。

 国立アメリカ歴史博物館では、2021年1月6日のアメリカ議会議事堂襲撃事件について、弾劾訴追についてトランプへの言及が既に削除されている。これでは、1人の指導者の意のままに歴史が改竄されることになってしまう。