中国少林寺住職の釈永信氏=2013年撮影(写真:ZUMA Press/アフロ)
(福島 香織:ジャーナリスト)
7月下旬から中国河南省の嵩山少林寺第30代方丈(住職)の釈永信が刑事犯罪容疑などで逮捕された件が、さまざまな方面から関心を呼んでいる。少林寺CEOと呼ばれ、一部では海外に1500億ドル以上の資産をもち、愛人51人、非嫡子数174人と噂される世界屈指の生臭坊主。
彼の破戒僧的振る舞いはすでに2015年に少林寺の僧侶たちから告発されていたが、当時は証拠不十分とされ、逆に告発した僧侶がスキャンダルで潰された。なのに、なぜ今になって逮捕されたのか。その背景を考えると、この動きは少林寺の問題にとどまらないかもしれない。
7月25日ごろ、釈永信が河南省地元警察に連行された、という噂がネットを駆け巡った。その後、釈永信が秘書(愛人)7人とその子供たち21人、寺院職員6人を伴って上海浦東国際空港からロサンゼルスに逃亡しようとしたところを、警察に逮捕された、という開封市公安局の微博アカウントを装った「警情通報」がネット上に流れた。
公安局発表の書体で、釈永信に関して警察は2年にわたり捜査をしていること。2001年ごろから愛人を囲いはじめ、すでに愛人51人、非嫡子174人に上り、それら愛人に海外で管理させている資産が413.26億ドルにのぼること。さらに少林寺の正式な海外子会社40社以上の資産、少林寺の海外弟子会員の会費、公式の寄付、運営する四つ星ホテル、ゴルフ場などの施設を含めた資産を含めると資産総額は1531.28億ドルにのぼること。また釈永信個人としてもケイマンやスイス銀行にも巨額の預貯金をもっていること、などが書かれていた。
この情報について開封市公安局はフェイクニュースと否定したのだが、その後、少林寺管理処が27日夜、正式に釈永信が逮捕されたことを発表したのだった。
少林寺管理処の正式発表によれば、釈永信は、寺院の資産、プロジェクトの資産を横領し、仏教戒律の重大な違反を犯し、長期にわたって多くの女性と不適切な関係をもって、非嫡子を育てていた、という。目下関連部門による合同の取り調べを受けている、らしい。
28日には中国仏教協会が声明を出し、「釈永信のやったことは十分に悪質で、仏教界の名誉を深刻に破壊し、出家人のイメージを壊した。河南省仏教協会の要請に基づき、中国仏教協会は釈永信(俗名:劉応成)の戒牒(僧侶の資格)を剥奪することに同意する」とした。29日、少林寺管理処は、元白馬寺主持の印楽法師に少林寺の住職となってもらうよう要請したと発表した。