習近平・国家主席が院政を画策?中国共産党の新たな組織をめぐり憶測が飛び交う(写真:ZUMA Press/アフロ)
(福島 香織:ジャーナリスト)
6月末に開催された中国共産党中央政治局会議で、審議されたという「党中央決策議事協調機構工作条例」が一体何を意味するのか、気になっている。要は党中央に新たに決策議事協調機構という組織を設立し、党の政策についてその組織が協調して議事を持ち決定するということで、その機構の運営の仕方について条例を作り、常設機構外の制度外機構だが半ば制度内機構と同じだけの権威を与えるということだろう。
では、このタイミングでこうした新機構を作り権威付けしようという狙いはなにか。政治局内では決められないような大規模なハイレベル人事を検討するのか。あるいは中国の政治方針に関する大転換が話し合われるのか。
一部反共的チャイナウォッチャーたちは、進みすぎた習近平個人独裁を集団指導体制に回帰させることが目的だろう、と解説していた。あるいは、これは習近平が、自分が引退した時のことを想定した院政準備だと言う人もいる。
また、これはかつての毛沢東の「中央文革小組」みたいなものだ、と言う人もいる。昨今、噂として盛り上がっている、習近平権力弱体説、早期引退説となにか関係があるのだろうか。
6月30日にほぼ2カ月ぶりに政治局会議が開催された。本来、この時期の政治局会議であれば、四中全会の日程や人事が主なテーマとなるはずだが、翌日の中国報道は一斉に「決策議事協調機構」が設立され、「工作条例」について審議されたことを報じていた。
党中央委員会工作条例によれば、部門、領域を越えた大問題の解決のために党中央は専門の機構として「中央決策議事協調機構」を設立することができる(13条)、とある。この機構で討論、審議するテーマについては、総書記自らが決定、批准する(29条)とある。そのため、この中央決策議事協調機構を設立するという決定は習近平が行った、ということになる。
公式報道によれば、今回の決策議事協調機構という組織設立の目的は、全党中央の重大な任務の「集中統一指導」を健全化し、しっかりと実施するための重要な制度を整備する、という抽象的な表現でしか説明されていない。なので、実際、習近平が何のために、この機構を設立しようとしているのか、実はよくわかっていない。